恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 それを思い出して、夢は湯船から勢いよく立ち上がった。
 

 「くよくよしてたらダメだ!ちゃんと気持ちを伝えなきゃいけないんだから!」

 夢は、自分に言い聞かせるようにそう言うと、浴室から出た。
 律紀が準備してくれたふわふわのタオルで体を拭き、身支度をして何度も鏡でチェックしてから脱衣所を出た。

 すると、キッチンの方からいい香りが漂ってきていた。
 律紀が夕食を準備してくれていたのだろう。
 
 お風呂上がりの赤らんだ自分の顔が恥ずかしかったけれど、夢はゆっくりとダイニングに顔を出した。


 「お、お風呂ありがとうございました。」
 「あぁ、上がりましたか。温まりましたか?」
 「はい。お陰さまで。」
 

 夢は律紀に頭を下げてお礼を言うと、律紀は安心した顔で微笑んで「よかったです。」と言ってくれた。

 
 「あと、これをどうぞ。左腕に当ててみてください。」
 「これは………?温かい……。」


 律紀に手渡されたのは、布製の袋だった。受け取るとほんのり温かかった。
 中には少し重いものが何個か入っていた。

 「中に天照石という、岩盤浴などで使われている石が入ってるんです。レンジで暖めるだけでほんのり温かくて………ひなたぼっこをしてる気分になる温かさをくれるんです。」
 「本当だ………なんか、優しいですね。」


 夢はその袋を胸に抱き締めると、じんわり体の中が温まるのを感じた。
 天照石の温かさと、そして律紀の優しさを感じ、夢は心がジーンとした。

 やはりこの人が好きだ。
 優しくて、真面目で、鉱石の事になるとこんなにキラキラした瞳で話をしてくれる。そんな律紀がたまらなく愛しいと思った。


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