恋愛下手な年下研究者の実験体になりました。



 話が長くなるからと、2人はリビングのソファに座って話しをする事にした。

 隣同士で座りながらも、横を向いて彼はしっかりの夢の方を見てくれる。
 眼鏡の奥の澄んだ瞳で見つめられると、夢はやはりドキドキしてしまう。
 「どこから話せばいいかな。」と少し悩んだ後、律紀は夢をまっすぐ真剣な視線で見つめながら話を始めた。



 「僕は両親とも医師という家庭に産まれました。幸い兄がいたので、そこまで熱心に勉強をすすめられたわけではなかったんですが、やはり医師になる事は絶対でした。勉強することは嫌いではなかったので………その、成績はよかったのですが。昔から石、鉱石に興味を持っていて、こっそり鉱石の事も調べるようになっていたんです。」
 
 律紀は、そこまで言うと少しだけ恥ずかしそうに苦笑した。


 「幼い頃、どうしても鉱石が欲しくて。いつも本や辞典ばかりを買って貰っていたので、なかなか言い出せなかったんですけど。誕生日にやっとお願いして買ってもらった物があるんです。」
 「どんな鉱石だったの?」


 夢彼が1番始めた欲した鉱石が何だったのか夢は気になった。
 やはり、キラキラとした水晶や宝石だろうか。そんな風に思っていた。


 「マラカイトですよ。」
 「………マラカイト……もしかして、それって……。」


 夢は、すぐにスカートのポケットの中に入れていた物を取り出した。

 ひび割れた、丸いマラカイトのキーホルダー。

 夢は驚いた顔で律紀を見つめると、ニッコリ微笑んだまま彼は頷いた。


 「そうです。それは、僕が持っていたマラカイトのキーホルダーなんです。」


 夢は、驚きすぎて声も出なかった。


 けれど、少しずつ繋がっていく過去。そこに、律紀が存在していた事がわかり、彼が今までしてきた意味をもっと知りたいと強く思った。




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