炎は水とともに散り行く
地面は雲のように白く、空は海のように青い。そんな場所で、僕は1人、湖のほとりで佇んでいた。水面に映る月は、風に吹かれ、揺らめいている。

「…何だよ。こんな時間に」

僕は、前を向きながら、後ろに立つ少年に声をかける。

「気づいていたの?紅蓮(ぐれん)」

「あぁ」

僕は、その場を動かずに声だけをかけた。

「紅蓮、今日はもう寝ないと、明日の朝は早いよ?」

「お前に言われたくない。帰ってくれ」

僕の名前は、城川(しろかわ) 紅蓮。人間になり切れず、死神にもなり切れない存在。ここは死神が住まう場所、『天界』と言う。この天界を納めているのは、女神様だ。

後ろで立つ少年の名前は、小桜 時雨(こざくら しぐれ)。こいつも人間になり切れず、死神にもなり切れない存在で、僕の友達。

「何で?」

「お前がいると、騒がしいからだ」

「酷いよ!俺、騒がしくないし!」

時雨が叫んだ。それをやめて欲しいと言っているんだ…。

「騒がしいだろ。叫ぶな、うるさい」

「…あ、そうだ。女神様が呼んでるよ?」

「女神様が?」

時雨は僕の目の前にくると、微笑んだ。

「そう!行こ」

そして、時雨は僕の手を引いて女神様の所に向かって駆け出していく。
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