バリトンボイスで囁いて
私の隣でピザのチーズを口につけたさやかが、
向かい側でクルクルとフォークの尖端で、器用に
パスタを絡めとる千佳さんに唐突に質問した

「千佳さんは結婚するとき、迷いとかなかった
んですか?」

え?なに?まさか、さやか結婚?

さやかをつい凝視していたら、ナプキンで口を
さっと拭いて

「違うからね。結婚するわけじゃないわよ」

私の言いたいことが分かったのか、聞く前に答えた

千佳さんはクスクス笑ってる
いつも穏やかで羨ましい限り


< 16 / 119 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop