というわけで、結婚してください!
 


 全員で上に上がる途中で、数志が、
「あ、鍵」
と言って、地下室の隅で小さな鍵を拾っていた。

 征が投げ捨てた鍵のようだ。

「今更いらんだろうが」
と言って、尊は、それも父親に返していた。

 本当は最初から数志さん、見つけてたのかもしれないな、と鈴は思う。

 さっき、お義父様が言っていたように、もしかしたら、数志さんも、征さんに、とことんまでやらせた方がスッキリすると思って――。

 そんなことを考えながら、鈴たちが玄関ホールに出ると、そこでは、ボロボロの窪田が待っていた。

「窪田さん、どうしたんですかっ?」
と鈴が言うと、

「いやあ、どうもこうも……」
となにか言いかけた窪田だったが、正明を見て、言葉を呑み込む。
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