というわけで、結婚してください!




 ガラス扉の向こうに居た尊は聞いた。

「今思えば、あの親犯罪スレスレですよねーっ」
と鈴が叫んだあと、ごぼぼぼぼっと音がし始めたのを。

「お前、今、ジェットバス動かしたろっ」
と尊はガラス越しに、鈴に向かって叫ぶ。

「はあ、気持ちいいです」
と鈴は言ってくる。

 ……本当に呑気だな、と思いながらも、なんとなく、そこに居ると、そのうち、飽きたのか、ジェットバスのスイッチを切ったらしく、静かになった。

 今度は、鈴が動くたび、水音が聞こえてくる。

 やめろ。
 どきりとしてしまうじゃないか、と思いながらも、尊は、まだそこに居た。

 鈴は、20センチのフライパンで殴られたいか。

 26センチのフライパンで殴られたいか。

 などというくだらぬ話をしているのに。

 何故だろう。

 妄想の中の鈴は、水音のせいか、泉の中から出てきた女神のような格好をしていた。
< 55 / 477 >

この作品をシェア

pagetop