というわけで、結婚してください!



 しばらく二人で黙ってバスに乗っていた。

 鈴も困っていたが、この男も困っているように思えた。

 男の名は、清白尊《すずしろ みこと》。

 名は清白だし、顔は瓜二つ。

 清白征《すずしろ せい》と双子なのかと思ったのだが、違うと言う。

「俺たちは異母兄弟なんだ」

 それにしては、そっくりだな、と鈴が思って見ていると、
「母親同士が双子なんだ」
と腕を組み、前を見たまま、尊《みこと》は言う。

「うちの母親は、妹に夫を寝取られ、俺は腹違いの弟に跡取りの座を奪われた」

 そ、それは最悪ですね……と他人事《ひとごと》ながらも思っていると、尊は溜息をつき、
「降りろ」
と言って、ボタンを押そうとした。
< 9 / 477 >

この作品をシェア

pagetop