恋愛零度。

「お母さんね、いままであなたたちにいろいろ言ってきたけど……」

お母さんは言った。

「うん」

と私は頷く。

「お母さんね、あなたたちに、傷ついてほしくなかったのよ。自分とおなじ失敗をしてほしくなかったの」

でもねーー、

「それを押し付けちゃ、だめよね。出会いがなければ、別れも傷つくこともないけれど、誰かを好きになる喜びも、思われる幸せを感じることも、なくなっちゃうもの。そんな当たり前のことを、ずっと忘れていたのよ」

ほんの少し、寂しそうな目で。でも、角が落ちたように、柔らかい口調でお母さんは言った。

「いるんでしょ、いま、真白を支えてくれる人が」

と、お母さんは言った。

え?と私は驚いてお母さんを見る。

「バレバレよ。最近の真白は、お母さんの目が追いつかないくらい、どんどん変わっていくから」

「そ、そう?」

いろんな人に、“変わった”と言われた。

自分では気づかないこと。だけど、まわりの人は、ちゃんと見てくれているってこと。

いまは素直に、そうなんだろうな、と思える。

ずっとひとりで閉じこもっていた、暗くて冷たい世界から、勇気を出して、一歩踏み出した。

だけど弱くて、臆病な私は、傷つきそうになると、何度もその場所に戻ろうとして。

その度に、私の手を引っ張って、強引にでも明るい場所に連れてきてくれたのは、君だった。





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