彼と私のかくれんぼ

「じゃ、白石。行くぞ」

「え? 行くってどこに?」

「決まってんだろ。ミッションクリアの為に文化祭、回んなきゃだろ」

「あ、そうだった」

「相変わらずボケッとしてんなあ、白石」

アハハハ、と大きな口を開けて庄司くんが笑う。

「どうせ私はぼんやりさんですよ」

「拗ねんなって。クレープおごってやるからさ」

その言葉に私は目を丸くする。

「何驚いてんだよ。言ってたじゃん、白石。『文化祭でクレープ食べたい』って」

数日前の、菜穂子ちゃんとの会話を思い出す。

確か私は文化祭のプログラムを見ていて、そこでクレープをやっているクラスを見つけたんだった。

そして、クレープを食べたいっていう話を菜穂子ちゃんとしたのだった。

「確かに言ってたけど、庄司くん聞いてたの?」

私の質問に、庄司くんはちょっとだけ私から視線を外し、目を泳がせた。

「聞いてたっつーか、聞こえてくるんだよ」

「聞こえてくる?」

「……白石の声が、いっつも俺の心にスーッて入ってくんの」

「……よくわかんない」

すると、庄司くんの手が、私の頭にポン、と乗っかってすぐに離れていった。
< 12 / 51 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop