彼と私のかくれんぼ

「お嬢、明日から休み取って東京行くんだよ。彼氏に会いに」

「ちょっと、久保田先輩!」

私が止めるのを聞かずに、先輩はトメさんに話し続ける。

「お嬢の彼氏っつーと、あの爽やかな兄ちゃんか?」

「そー。ま、厳密に言うと友達の個展が東京であるから、彼氏と一緒に見に行くって話だけどな。な?」

「……ま、そうですけど」

高校を卒業して、私は地元に残ったけれど、庄司くんは東京の大学へと進学した。

お母さんが亡くなってから、ずっとひとりで庄司くんを育ててくれたお父さんが再婚することになり、両親に新婚生活を楽しんでもらいたいと思っていた庄司くんは、家を出ることを決めたらしい。

でも、地元の大学に行くのならひとり暮らしを許してくれそうにないからと、その大学よりももっとレベルの高い東京の大学を受験して、合格したのだった。

そして、そのまま東京で就職をしているので、私たちはかれこれ五年近く遠距離恋愛というものを続けている。

いつもは庄司くんがこっちに帰って来てくれて会うのだけど、今回は初めて私が東京へと足を運ぶことになったのだ。

きっかけは、辻井くんから初めての個展を東京で開くから来てほしい、と招待を受けたことだった。

画家を目指していた辻井くんも、庄司くん同様に高校を卒業後、東京にある美大へと進学し、その才能をめきめきと開花させていっていた。

結果、私にはよくわからないけれど、若手の登竜門的な賞をもらい、世界からも称賛を受け、今回の個展を開催するということになったらしい。

「へぇ。あの過保護な坊ちゃんがよく許したなあ」

トメさんの言う坊ちゃんは、私の父のことだ。

確かに父は厳しいけれど、少し過保護な一面もあって、学生時代はかなり厳密に門限が定められていた。

庄司くんはそんな私の家庭環境もきちんと考えていて、付き合いだしてからこれまで、いつも時間通りに家まで送ってくれている。

「こっちに帰って来たときも必ず顔を出して挨拶してくれてるから、お父さんも多少は信頼してくれてるみたい。今回は渋々って感じだったけど、許してくれたんだ」

「確かにあの兄ちゃんなら、お嬢を任せてもいいかって思うよな」
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