彼と私のかくれんぼ

その人物を見て、私の口から驚きの声が漏れる。

「どうしたの、紗英」

「……昨日の人たちだ」

「昨日のって。ショージの会社の意地悪女?」

見間違えるはずもない。昨日すれ違った庄司くんの同期の女の子たちだ。

昨日のキリッとしたスーツ姿よりも柔らかい服装をしているけれど、遠目から見てもやっぱり美人のふたり。

ふたりは私の存在に気づくはずもなく、一目散に辻井くんと話している庄司くんの方へと近寄っていく。

「友樹、お招きありがとう」

「……お招きって何よ。つか、ショージのヤツ、何誘っちゃってんのよ」

私の横でリエさんが少しイライラとしているのがわかる。

彼女たちは辻井くんが庄司くんの友人というのも聞いているのだろう。

「すごいステキな絵ですねぇ」

「ホント。友樹から聞いてたけど、ものすごい才能!」

「もう。ヒロに媚び売ったって、何にも出てこないんだからね!」

「リエさん、落ち着いて」

今にも彼女たちに飛び掛かりそうな勢いのリエさんを私は必死で止める。

「うっわぁ。私、ああいうの一番苦手なタイプかも」

菜穂子ちゃんが珍しく、顔をしかめている。

自分では見れないけれど、きっと私も菜穂子ちゃんと似たような顔をしているのだろう。

意識的に少し高めの声を出している感じの彼女たちの声が、耳に響いて心地悪い。
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