野獣は時に優しく牙を剥く

 今度こそ出て行く彼に付け加えるように言われた。

「食べておくから。代わりにお弁当。」

「えっ。」

 何か言う前にドアは閉まってしまって見えない彼へ溜息を漏らす。

 どこまでからかえば気が済むのか。
 世界が違う人の考えることは分からない。

 振り向けば荒れ果てた部屋。

「ヨシッ。やるかぁ!」

 気を取り直すと気合いを入れて腕まくりをする。
 考えなきゃいけないことは山積みで、けれど今は目の前の汚部屋を綺麗にすることに専念した。
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