野獣は時に優しく牙を剥く

 仕方なく渋々受け取ると谷は満足そうに言った。

「じゃまた明日。」

「……はい。
 お気をつけてお帰りください。」

「ハハッ。固いね。」

 楽しそうに笑う谷を複雑な気持ちで見送る。

 動き出そうとする車の窓が開いて谷がこちらを見据えて言った。

「自分だけでどうにかしようと思わないで欲しい。
 今日はそれを分かって欲しかった。」

 それだけ言うと「おやすみ」と言い残して車は去って行った。

< 38 / 233 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop