クラスメイトの告白。


私は、ベランダに干してあるカツラをチラッと見る。


「学校で変装してるのは、どうしてなの?」


「……目立ちたくないから」


「あ、白石さんの事故のことを密かに調べるため?」


「……まぁ、そんなとこ」


たしかにこんな美少年が学校にいたら、校舎のどこにいても目立ってしまう。


教室にいたら、つねに人がまわりに集まりそうなタイプの男の子だ。


たしかに事故のことをこそこそ調べるのは難しそう……。


いや、でも……友達が多いほうが事故の話も聞きだしやすいんじゃ……?


あ、わかった。


白石さんのことを想って、変装しているんだ。


学校にこんな美少年がいたら、女子たちがほっとくわけない。


大切な彼女がいるから。


女子たちにモテモテになったら困るからだ。


それくらい本当にイケメンだもんね。


きっとそうにちがいない。


女子たちを寄せつけないために変装してるなんて、どこまでも彼女想いの彼氏……!!


「でもすごい演技力だよね。本当に別人だよ」


「キャラ設定ミスったけどな。変装後のキャラだと、話しかけても逃げられることが多くてさ。みんな完全に俺のこと気持ち悪がってるし」


「そんなことはないと思うけど……」


「暗いとか幽霊とか……」


「ボソボソってしゃべるからじゃない? いまみたいに普通の声で話せばいいのに」


「いまさらキャラ変えたら、おかしいだろ」


たしかに、びっくりする。


「それで調べるのに限界がきて、相棒が必要になったの?」


「さすが汐野! 話が早いな」


東京から田舎の高校に転校してきて、このアパートでひとり暮らし。


愛する彼女のために、事故の真相を調べようとしている。


目立たないように、変装までして違う自分を演じている。


まだ伊原くんのことは知らないことばかりだけど、秘密を打ち明けてくれた彼に協力してあげたいと思った。


それに、白石さんの制服のポケットに入っていた、いじめをうかがわせるような紙のことも気になる。
< 38 / 372 >

この作品をシェア

pagetop