クールで一途な国王様は、純真無垢な侍女を秘蜜に愛でたおす
「本当に、本当にこれですべて終わったのですね……」

こんなにも幸せでいるといつかまた悲劇が起こるのではないか、という不安に駆られてしまう。しかし、ジークはそんな懸念も吹き飛ばすような優しい笑みを浮かべていて、ドキリとアンナの心臓が跳ねた。

「ベアトリクスはもうこの大陸にはいられない。私は彼女に流刑を言い渡した。ここから離れた孤島へレオンにより移送される。あいつにとっては辛い役回りになってしまったが……私は国王として正しいことをしたと思っている」

力強く、そして迷いのないジークの言葉にアンナも頷いた。

ジークはいかなるときも堂々と、そして凛々しくて頼もしい存在だ。ジークを愛してよかったとアンナは心の底からそう思えるのだった。

(私、なにを怖がっているのかしら……前に進まなきゃだめね)

「ジーク様、愛しています」

まっすぐな気持ちを言葉にして安心を求めると、腰を抱くジークの腕に力がこめられる。

「何があっても、私の命ある限りお前を守る。これからもずっと、必ずだ。アンナ、愛している」

深く唇を合わせると、舌が絡みついてくる。その濃厚な口づけにアンナの鼓動も高鳴っていった。ふたりは自然とベッドへ雪崩れ込み、アンナは軽く押し倒されるとジークの双眸に見下ろされる。その身体の重みがこの上なく心地いい。

「すまないが、私は部屋に戻るまで我慢できそうにない……逃げるなら今のうちだぞ」

そう言いながらジークはアンナの首筋に唇を這わせ、熱い吐息がかかるとゾクッと身体を震わせた。口を開くと妙な声が出てしまいそうで、アンナはなにも言わずにジークの首に腕を回して口づけた。それが“どこにも逃げたりしない”というアンナの答えだった――。

「……っ、あっ」

衣服を脱がされ、一糸まとわぬ姿になるまで意識がなかったような気がした。医務室に響く淫らな声が自分の声だと気づき、アンナはゆっくりと目を開いた。

今まで誰にも見せたことのない箇所を晒し、アンナの羞恥を煽るようにジークの熱い手が、舌が這う。

「ああ、お前の身体は甘くて、柔らかくて……まるで果実のようだな」

身を捩る間もなく首筋に口づけられ、やんわりと甘噛みされて悶え仰け反ると、ジークは愛おし気にアンナの髪の毛を指で梳き、唇を綻ばせた。

その澄んだ瞳にぼんやりと自分が映っている。ほどよく筋肉のついたジークの逞しい身体に抱かれていると思うと、かっと芯が熱を持つのを感じた。

「お前の肌はいい匂いがするな、ずっと触れていたい……」

「も、もう……わざと私が恥ずかしくなるようなこと言って楽しんでませんか?」

ジークに囁かれる度、羞恥でおかしくなりそうだった。顔のみならず、全身まで真っ赤になって上気している。

「お前、今自分がどんな顔をしているかわかるか?」

「え?」

「困ったような表情をしながら、満更でもなく私の愛撫を求めている色っぽい顔だ」

無意識にそんな顔をしていたなんて、しかもそれを指摘され、アンナはパッと両手で顔を覆った。
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