拝啓、未来へ
紡いだ日々

1枚目












――土曜日。
それはごくごく普通な大学生のわたしにとって、もちろんお休みの日。

だけどわたしより先に一般社会に飛び出した恭ちゃんには、休日出勤というものがあるらしい。
ここ最近では日曜日も仕事をしているようだ。


恭ちゃんは「忙しい」や「疲れた」をまったく顔に出さないで、わたしと会った時はいつも優しく抱きしめてくれる。
わたしのわがままにも嫌な顔ひとつせず「可愛いなあ」なんて、くしゃくしゃ笑顔で頭をなでてくれる。





そんな多忙な日々を送るわたしの大好きな恭ちゃんが、今週の土曜日は珍しく休みらしい。
無理矢理取ったのか偶然取れたのか、そこは定かではないけれど。


だからなのだろう。
金曜日の夜中1時過ぎに恭ちゃんは一人暮らしのわたしの家にやってきた。


自分の家のように当たり前に、だけど遠慮がちに「ただいま」という声が、解錠音の後に玄関から聞こえた。

今から帰る、なんて連絡はなかった。
多分わたしが寝ていると思って遠慮したんだと思う。


「おかえりなさい。お疲れさま」と声をかけるとびっくりした顔を見せる恭ちゃんは、すぐにふにゃりと破顔して「癒される。」とようやく息を吐いて脱力したようだった。


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