サイドキック
派手な風貌を構成しているのはその髪色だけでは無い。
両耳の至る所に開けられたピアスホールを埋める煌びやかなアクセサリーは嫌でも目に付く。
均衡に欠けたそれはアンバランスに男の耳朶を装飾し、様々な光を受けて反射していて。
其れらが独り歩きしていないところが流石と言うべきか。
まるで成るべくしてその場に落ち着いているかの如く、男の"外見"という枠に収まっているのだ。
『ふーん、そうかそうか。お前が例のヤツね』
『―――どういう意味だ』
『お、やっと喋った』
にやりと口角を上げた男は、「声、結構高めだな」と別に求めてもいない感想を洩らす。
これでも低めに話してるほうだ。
慣れていく内に板に付いたのか、次第に疑われないくらいには低音で話せるようになったのだけれど。
でもやっぱり、"男"初心者のこの頃は上手くいかないことのほうが多くて。
『やーっぱ、なんか女っぽいよな、オマエ』
それを嫌になるほど自覚していた私からすれば、このときコイツに放たれた言葉は禁句以外の何物でも無かった訳で。