サイドキック
親友だった。なんでも話せるヤツだった。
横たわったそいつからは今、おびただしいほどの血が溢れ出ていて。
『サ、トル…………』
どうしてこんなことに、なってるんだ。
がくがくと震えだす脚は自らの意思に反するように後退していく。
見ていられなかった。
否、見たくなかった。
『――――……その、声』
『ッ』
『お前………ワタル、なのか?』
血ばかりが海のように広がるそこで、驚きに目を見開くサトルは俺をジっと見つめていた。
叫ぶことも、泣くことも、怒ることもなく。
ただ、ジっと。
自分を轢いた張本人である俺を責めることもなく、ひたすらに見据えるだけだったんだ。
『――――………ッ、』
しかしながら、その行為が。
そのときの俺には、サトルにこれ以上ないくらい責められているように思えて仕方なかった。
わけも分からずバイクまで後退し、飛び乗り、エンジンを掛けて。
『なんだ、今のは――――……おい君、大丈夫か!?』
目撃者が居るなんて気付きもしなかった。
とにかく、この現実から目を背けたくて。
夢だと言って欲しくて。
恐くて。恐くて恐くて。
『――――……サトル、ごめんっ』
そう、謝ることもできなくて。