サイドキック






「(…何回目だよ……)」


正直数えきれないほどの前例がある。

ヒロヤに誘われてツーリングに明け暮れたあとは決まって喧嘩でフィニッシュ。








「――――よぉ」

「!!誰だテメェッ」







そう、例えばレストランで予め決められているディナーコースのように。

ツーリングというメインを終えた私たちは、喧嘩というデザートを求めて闇に紛れる。










円を組むように地面へと腰を下ろしていた男たち。

その中の一人に標的を定めたらしいヒロヤは、男たちが手にする白い粉の入った袋を目にしてほくそ笑む。



「ビーンゴォ」






口笛混じりにそう声を上げたヒロヤ。

その声と振り上げたヒロヤの腕が合図となり、少し距離を隔てていた私もその渦中へと身を投じる。












「こ、こいつら―――"聖龍"のッ、」




私たちのことを噂か何かで耳にしていたらしい男の、か細い声音は直ぐに途絶えることになる。









< 45 / 362 >

この作品をシェア

pagetop