見えない世界でみつけたもの
「雄太……はい着替えだよ」
「……ありがとう」

 俺の手に触れるこの感触は、いつも着ている制服だ。いつも、俺の着替えを用意して手に載せてくれる静。

 最初は服を着るのに苦労したが、今はやっと慣れきた。

 見えなくても出来る事は自分でしたい。

 それが俺の考えだ。

 どうしても出来ない事は最初は手伝ってもらう。そして、覚えてからは自分の力でやってみる。

 静には随分と世話になっている。

 俺が一年前、事故で視力を失ってからずっと俺の目の代わりをしてくれている。

 本当は今通っている高校も辞めるつもりだった。

「私が、雄太の目になる! ずっと……これからずっと……」
 
 だが、静が俺と家族にこう言ったのだ。

 俺には静の顔が見えない。

 でも声で分かった――泣いている静の顔が脳裏に浮かんだ。

 静は俺の手を取り、優しく握ってくれた。それだけなのに……たったそれだけなのに、俺は泣いていた。

 静の気持ちが、優しさが、俺の中で広がり、波を打つように響いていった。

 それから静はずっと俺のそばにいてくれる。
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