見えない世界でみつけたもの
 今日一日、静の様子はおかしかった。

 どこか変だ。

 声は段々と弱弱しくなっていく。

 それでも静は「大丈夫」の一言で済ませてしまう。とても大丈夫そうには聞こえないのに――。

 今は学校帰りで、静と一緒だ。今日も手は繋いでいるが、どうにも変だ……異様に手が熱い。

「静……お前、熱あるんじゃないか?」
「……ないよ。私は元気だよ」

 確かに熱い。手から伝わってくる熱は、明らかにいつもと違う。

 ――静は無理をしている。

 直感でそう感じた。俺は手を離して静の額に手を当てようと伸ばすが、それは静の手に阻まれてしまう。

「大丈夫だから……雄太は心配しないで」
「……静」

 俺の手を掴む静の手は熱かった。やっぱり静には熱がある。

 なんで一言、言ってくれないんだ。

 俺はどうしたらいい?

 このまま静を先に帰すか?

 いや、それは静が嫌がるだろう。

 俺が混乱する頭で思案していると、静は俺の手をしっかり握り歩き出した。

「大丈夫――もう少しで家に着くよ」

 ゆっくりと俺の手を引いて歩く静の息遣いが聞こえる。

 それはかなり熱っぽく、呼吸は速く荒く、相当無理をしているのは明らかだった。

 それでも俺のペースに合わせて歩く静。

 どうしてそこまでするのか、なぜ何も言ってくれないのか。

 行き場のない言いようもない憤りを胸に、俺はただ早く家に着く事だけを祈っていた。
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