諸々ファンタジー5作品
共同生活
『二人』
5人での生活が始まった。
預言者ではなく、薬師として戦のチームに入ったロスト。戦士セイラッド。パン屋のアクル。季節労働者ゾグタ。楽士のクルヒ。
裏切り者を含んだチーム。
試験は3か月後。セイラッドの試験は、二十人の命を左右した。そして、この小さな国ミャーダの未来も、ほんの少しの時間稼ぎ。
小さな希望。
セイラッドは、3人に同じような訓練を行う。一週間、一通りの同じメニュー。
そして、二週目に監視を止めた。
「ロスト、ちょっと良いか?」
「あぁ、俺の訓練か?」
ロストは、剣を手に立ち上がる。
薬師として薬草を集め、宿営の一角には、立派な倉庫まで設置されていた。
「いや、必要がない。だろ?」
ロストは得た知識を、身をもって学んだ。
戦士のセイラッドには、ロストの培った剣術が身体を見れば理解できたようだ。体の造り……難しい何かを含んだ、実験の賜物。
3人は、ロストの役割が薬師だと信じていたようだ。少なくても……“知識のある者”との認識だっただろう。
戦時に、その必要性を理解したか……分からない。
それも少しの期間。実践では、“薬”とは何か、学ぶことになるだろう。必要なモノ。
大国タイドフが望んだもの……裏切る者は、それに気づく。そして…………
まだ、未来を語るのは早いか……勝利の夢を見るのも悪くない。
つかの間の、平安を。
ロストはセイラッドと、城の敷地にある庭園へと向かった。辺りを見渡せる、一望できる小高い場所。
セイラッドの口が開く。
「ロスト、『タイドフの戦士』クラインを知っているか?」
「若き戦士、タイドフの大軍を指揮する者。その知識と力に、集う兵。願望の泉……俺達の敵。」
「腕は一流、実績もある。夢は、どこまでだ?」
いつものように試す視線で、セイラッドは尋ねた。
「夢は果てがない。見る者によって、解釈も違う……予知夢・悪夢・記憶にも残らない・夢を見ない……俺は、夢を見ない。未来を見る。計算された、誤算のあるモノ。先を読んで、崩される可能性のあるモノだ。」
「くくっ。案外、いい加減なんだね。」
「そうだよ。そんなものだ。」
集団生活に歪が見え始める。
ロストの試験は、もうすでに始まっていた。5人での生活が出来ないなら、それ以上の人数に対応できない。
人が増えるにつれ、比例以上の問題を抱える。
感情の海原、静まることがない。自然と同じように、小さな炎……戦の闘志へと流れないで留まる空気に触れ、爆撃となる。
秩序のないところに勝利はない。
「ロスト、問題が増えているのでは?」
「計算では、二十名……残るか残らないか。それでいい。希望は、ない方が良いんだ。」
「舞姫は、どうしているかな?お前の事、何を聞いて何を思うだろう?」
「……安全は確かだ。」
視線を空に向けたロストに、セイラッドは笑う。
「ロスト、お前の目に恋が見える。」
ロストは、時間が止まったように感じた。
自分の記憶に、『恋』が知識以外で存在するのか。答えが出ない。いつものように何かで調べること、まして、いつか得る時期を待つものでもない。
「ぷっ……くくくっ。今までで、一番興味深い表情だね。」
セイラッドも、空を見上げる。
「君は、恋をしているのか?」
「ふふ。絶対に手に入らない存在だよ。くくく……」
セイラッドがロストに興味を持った理由。それを知るのは、この物語の最後かもしれない。
いや……今は、戦時。心の拠り所。二人の心にいるのは女性。
ほんの少しの幸せを願い
……誰かを想う恋心に何を感じ、何を優先したのか……
5人での生活が始まった。
預言者ではなく、薬師として戦のチームに入ったロスト。戦士セイラッド。パン屋のアクル。季節労働者ゾグタ。楽士のクルヒ。
裏切り者を含んだチーム。
試験は3か月後。セイラッドの試験は、二十人の命を左右した。そして、この小さな国ミャーダの未来も、ほんの少しの時間稼ぎ。
小さな希望。
セイラッドは、3人に同じような訓練を行う。一週間、一通りの同じメニュー。
そして、二週目に監視を止めた。
「ロスト、ちょっと良いか?」
「あぁ、俺の訓練か?」
ロストは、剣を手に立ち上がる。
薬師として薬草を集め、宿営の一角には、立派な倉庫まで設置されていた。
「いや、必要がない。だろ?」
ロストは得た知識を、身をもって学んだ。
戦士のセイラッドには、ロストの培った剣術が身体を見れば理解できたようだ。体の造り……難しい何かを含んだ、実験の賜物。
3人は、ロストの役割が薬師だと信じていたようだ。少なくても……“知識のある者”との認識だっただろう。
戦時に、その必要性を理解したか……分からない。
それも少しの期間。実践では、“薬”とは何か、学ぶことになるだろう。必要なモノ。
大国タイドフが望んだもの……裏切る者は、それに気づく。そして…………
まだ、未来を語るのは早いか……勝利の夢を見るのも悪くない。
つかの間の、平安を。
ロストはセイラッドと、城の敷地にある庭園へと向かった。辺りを見渡せる、一望できる小高い場所。
セイラッドの口が開く。
「ロスト、『タイドフの戦士』クラインを知っているか?」
「若き戦士、タイドフの大軍を指揮する者。その知識と力に、集う兵。願望の泉……俺達の敵。」
「腕は一流、実績もある。夢は、どこまでだ?」
いつものように試す視線で、セイラッドは尋ねた。
「夢は果てがない。見る者によって、解釈も違う……予知夢・悪夢・記憶にも残らない・夢を見ない……俺は、夢を見ない。未来を見る。計算された、誤算のあるモノ。先を読んで、崩される可能性のあるモノだ。」
「くくっ。案外、いい加減なんだね。」
「そうだよ。そんなものだ。」
集団生活に歪が見え始める。
ロストの試験は、もうすでに始まっていた。5人での生活が出来ないなら、それ以上の人数に対応できない。
人が増えるにつれ、比例以上の問題を抱える。
感情の海原、静まることがない。自然と同じように、小さな炎……戦の闘志へと流れないで留まる空気に触れ、爆撃となる。
秩序のないところに勝利はない。
「ロスト、問題が増えているのでは?」
「計算では、二十名……残るか残らないか。それでいい。希望は、ない方が良いんだ。」
「舞姫は、どうしているかな?お前の事、何を聞いて何を思うだろう?」
「……安全は確かだ。」
視線を空に向けたロストに、セイラッドは笑う。
「ロスト、お前の目に恋が見える。」
ロストは、時間が止まったように感じた。
自分の記憶に、『恋』が知識以外で存在するのか。答えが出ない。いつものように何かで調べること、まして、いつか得る時期を待つものでもない。
「ぷっ……くくくっ。今までで、一番興味深い表情だね。」
セイラッドも、空を見上げる。
「君は、恋をしているのか?」
「ふふ。絶対に手に入らない存在だよ。くくく……」
セイラッドがロストに興味を持った理由。それを知るのは、この物語の最後かもしれない。
いや……今は、戦時。心の拠り所。二人の心にいるのは女性。
ほんの少しの幸せを願い
……誰かを想う恋心に何を感じ、何を優先したのか……