諸々ファンタジー5作品
凱旋
愛玩の舞姫……彼の為に、懸命に舞う。すべてを忘れ、短い幸せと一時の希望。
町の人がどうだったか……ワタシは知らない。それでも、その凱旋は存在した。
『夢の時間』
二十人も満たない傷を負った戦人。
町に入ると、そこは凱旋……
その季節に咲いた花びらが空から舞い、道路を覆う。赤とピンクの花、甘い香り。女性と子供が舞う
……ティン・ドン・シャン・トントントン・ティン・ドン・シャン・トントントン……繰り返す打楽器に合わせ、人々が舞う。
その中に……ワタシがいた。
夢のような時間。この舞っている時だけは、あなたを想える。あなたは、見てくれたかしら?
ワタシが……あなたに会えるのは…………
町の明かりは、夜を照らす。
敵も知っただろう。小さな町の勝利。そのカギが火竜だと……少しだけ延びた寿命、敵対する小さな国の浮かれ騒ぎ。
時を刻む。滅びを目的とした日が刻々と……
「ロスト、舞姫がいると聞いた。会いに行かないのか?」
「……会って、どうする?俺は、彼女の身の安全だけを願う。」
ロストは、凱旋の見える高台にいた。
見下ろすと、日中に舞っていた花びらが地面を覆っている。それは大勢に踏まれて血のように染まり、異様な香りを漂わせた。
酔うような匂いが、離れた場所にまで運ばれ凱旋を夢のように思わせる。幻想……覚める夢のように、一時。
黙っているロストに、セイラッドは飲み物を渡した。
「酒だ。一時の酔いに、呑まれろ……お前の見ているものを、俺も見る。口を滑らかにしろよ。」
「セイラッド。カギを使ったのは、間違いだろうか?」
ロストは一気に飲み干し、セイラッドを見ずに呟く。
「さぁな。ただ、何も変わらない。変わらないだろ、未来は……」
セイラッドは開いた手を見つめ、握り締めた。
「セイラッド……誓って欲しい。逃げてくれ、未来が変わらないのなら……」
「誓ってもいいが、守らないぞ?俺は、俺が願うのは……ロスト?」
酔いに、ロストはセイラッドに寄り掛かる。
寝息にセイラッドは、笑みをもらす。ロストを抱え、星の瞬く夜空を見上げ一言。
「欲しいものを手に入れたい。」
朝も、町は賑わい露店にアルコール。大勢が歓喜の声。
しかし、舞姫のウワサは聞こえない。
「ロスト、いつまでここに留まるんだ?」
頭を押さえたロストは、自分の元に来るゾグタに言い放つ。
「近づくな!……っ、痛みで狂いそうだ。薬草を取りに行く。」
警戒心の欠片も見せなかったロストの激しい一面。
足取りも、おぼつかない。そんなロストを見てセイラッドは腹を抱えて笑う。
つられて笑いが漏れたゾグタ。普段、強面の彼も顔がゆるむ。
「ゾグタ、腕前を見てやる。俺を殺すつもりで来い!」
「セイラッド、俺は……」
ゾグタの続く言葉も聞かず、セイラッドは後姿で、黙って手招き。
「セイラッド、俺達も良いか?」
彼らを見つけ、アクルが叫ぶ。その隣には、クルヒ。
グループ5人は、常に近くにいる様だった。
何を感じ、何を思っていたのか
……ワタシは知らない……だって、もうすぐ…………
「アクルとクルヒは、待っていろ。ロストが、ここに戻るはずだから。くくっ、二日酔いなんだ。後を頼む!」
ロストは、薬草の小屋に入る。鎮痛効果の薬草を、口に入れた。
「っ、苦い……」
「くすくすっ。舞姫は、健気だったわよ?どうして、夜を共にしないの?戦は……」
声の方に短刀を投げ、ロストは素早く攻撃態勢に入った。
「やだ、怖いぃ~~。」
短刀の刃先を指に挟み、壁にもたれた無防備な女性の姿。
「エルミ。今、ここで死ぬか?密偵が一人、消えても問題はないだろう?」
エルミは、短刀を床に突き刺した。
「そうね……どうしてか、あなたには油断しちゃうのよね。……どこかで会わなかった?不思議な感覚がする。密偵としての勘が告げるの。……ふふ。殺気が消えない。ゾクゾクする……」
エルミの眼は、ロストに疑問を増やす。
「……エルミ、彼女を守ってくれ。俺の命や忠誠は、彼女がもたらす。」
「知っているわ。でも、クラインは……あなたの死を願っている。舞姫の命の保証は……」
「俺に、何の価値がある?死んでも、生きていても……」
【ガタッ】
物音に、エルミは小窓を器用に抜けて姿を消した。
ロストは短剣を拾い、懐に入れる。ドアを開けると、そこには誰も居なかった。
頭痛は治まり、思考も働く。
しかし、今の状況を判断できるほどではない。どんな記憶の奥深くにも、答えは見出せなかった。
可能性では、人を裁けない。この情報も、未来を覆すことはないだろう。
自分の命の灯を自覚する…………
セイラッドも、強くなる戦士を見つめ……剣を交わし、何を思ったのか。
ワタシは知らない。
凱旋の夢を見ている小さな国の民。
知っている……自分たちの未来。限られた期限に夢を見て、幸福を共にする時間を願う者との貴重な瞬間。
花は舞い、止められた儚い生命に匂いは蔓延する。
小さな町を包んで……夢…………
町の人がどうだったか……ワタシは知らない。それでも、その凱旋は存在した。
『夢の時間』
二十人も満たない傷を負った戦人。
町に入ると、そこは凱旋……
その季節に咲いた花びらが空から舞い、道路を覆う。赤とピンクの花、甘い香り。女性と子供が舞う
……ティン・ドン・シャン・トントントン・ティン・ドン・シャン・トントントン……繰り返す打楽器に合わせ、人々が舞う。
その中に……ワタシがいた。
夢のような時間。この舞っている時だけは、あなたを想える。あなたは、見てくれたかしら?
ワタシが……あなたに会えるのは…………
町の明かりは、夜を照らす。
敵も知っただろう。小さな町の勝利。そのカギが火竜だと……少しだけ延びた寿命、敵対する小さな国の浮かれ騒ぎ。
時を刻む。滅びを目的とした日が刻々と……
「ロスト、舞姫がいると聞いた。会いに行かないのか?」
「……会って、どうする?俺は、彼女の身の安全だけを願う。」
ロストは、凱旋の見える高台にいた。
見下ろすと、日中に舞っていた花びらが地面を覆っている。それは大勢に踏まれて血のように染まり、異様な香りを漂わせた。
酔うような匂いが、離れた場所にまで運ばれ凱旋を夢のように思わせる。幻想……覚める夢のように、一時。
黙っているロストに、セイラッドは飲み物を渡した。
「酒だ。一時の酔いに、呑まれろ……お前の見ているものを、俺も見る。口を滑らかにしろよ。」
「セイラッド。カギを使ったのは、間違いだろうか?」
ロストは一気に飲み干し、セイラッドを見ずに呟く。
「さぁな。ただ、何も変わらない。変わらないだろ、未来は……」
セイラッドは開いた手を見つめ、握り締めた。
「セイラッド……誓って欲しい。逃げてくれ、未来が変わらないのなら……」
「誓ってもいいが、守らないぞ?俺は、俺が願うのは……ロスト?」
酔いに、ロストはセイラッドに寄り掛かる。
寝息にセイラッドは、笑みをもらす。ロストを抱え、星の瞬く夜空を見上げ一言。
「欲しいものを手に入れたい。」
朝も、町は賑わい露店にアルコール。大勢が歓喜の声。
しかし、舞姫のウワサは聞こえない。
「ロスト、いつまでここに留まるんだ?」
頭を押さえたロストは、自分の元に来るゾグタに言い放つ。
「近づくな!……っ、痛みで狂いそうだ。薬草を取りに行く。」
警戒心の欠片も見せなかったロストの激しい一面。
足取りも、おぼつかない。そんなロストを見てセイラッドは腹を抱えて笑う。
つられて笑いが漏れたゾグタ。普段、強面の彼も顔がゆるむ。
「ゾグタ、腕前を見てやる。俺を殺すつもりで来い!」
「セイラッド、俺は……」
ゾグタの続く言葉も聞かず、セイラッドは後姿で、黙って手招き。
「セイラッド、俺達も良いか?」
彼らを見つけ、アクルが叫ぶ。その隣には、クルヒ。
グループ5人は、常に近くにいる様だった。
何を感じ、何を思っていたのか
……ワタシは知らない……だって、もうすぐ…………
「アクルとクルヒは、待っていろ。ロストが、ここに戻るはずだから。くくっ、二日酔いなんだ。後を頼む!」
ロストは、薬草の小屋に入る。鎮痛効果の薬草を、口に入れた。
「っ、苦い……」
「くすくすっ。舞姫は、健気だったわよ?どうして、夜を共にしないの?戦は……」
声の方に短刀を投げ、ロストは素早く攻撃態勢に入った。
「やだ、怖いぃ~~。」
短刀の刃先を指に挟み、壁にもたれた無防備な女性の姿。
「エルミ。今、ここで死ぬか?密偵が一人、消えても問題はないだろう?」
エルミは、短刀を床に突き刺した。
「そうね……どうしてか、あなたには油断しちゃうのよね。……どこかで会わなかった?不思議な感覚がする。密偵としての勘が告げるの。……ふふ。殺気が消えない。ゾクゾクする……」
エルミの眼は、ロストに疑問を増やす。
「……エルミ、彼女を守ってくれ。俺の命や忠誠は、彼女がもたらす。」
「知っているわ。でも、クラインは……あなたの死を願っている。舞姫の命の保証は……」
「俺に、何の価値がある?死んでも、生きていても……」
【ガタッ】
物音に、エルミは小窓を器用に抜けて姿を消した。
ロストは短剣を拾い、懐に入れる。ドアを開けると、そこには誰も居なかった。
頭痛は治まり、思考も働く。
しかし、今の状況を判断できるほどではない。どんな記憶の奥深くにも、答えは見出せなかった。
可能性では、人を裁けない。この情報も、未来を覆すことはないだろう。
自分の命の灯を自覚する…………
セイラッドも、強くなる戦士を見つめ……剣を交わし、何を思ったのか。
ワタシは知らない。
凱旋の夢を見ている小さな国の民。
知っている……自分たちの未来。限られた期限に夢を見て、幸福を共にする時間を願う者との貴重な瞬間。
花は舞い、止められた儚い生命に匂いは蔓延する。
小さな町を包んで……夢…………