先生、あのね。(短編集)

先生、あのね

「先生。おはよう」
目が覚めて隣にいた人に声をかける。
「おはよう。」
そう言って頭をくしゃっとなでてくれた。
先生のこの手が大好きだった。中学の時もたまに撫でてくれた(掴まれた?)のが嬉しくて毎回休み時間には遊びにいってたほどだ。

一息ついて部屋を見回すといつもとは見慣れない風景。少し散らかっており、床には無造作に脱ぎ捨てられた二人分の衣服。
そうだ、私昨日…。
ふと思い出して急に恥ずかしくなった。 
「耳まで真っ赤。まだまだ子供だね。」
なにその余裕。ずるい。
自分はこんなに恥ずかしいのに…と思った。
昔から憧れていた先生に追い付きたくて中学を卒業してからも早く大人になりたい、そう思ってたのに。先生からしたら私はまだまだ子どものようだ。



先日たまたま近くのお店で会い、元々ラインを交換してたのもありやり取りをするようになった。
聞いてみるとまだ独身であるらしく彼女もいないとのことだ。それを聞いた瞬間久しぶりに胸が高鳴るおとがした。先生のことは中学の時から密かに好きだったのだ。ただお互いの立場もありその時は胸に思いをしまった。
けど、今はもう教師と生徒ではない。ましてや私は成人も迎えたのだ。こんなチャンス逃すわけにいかない、と即座にごはんにいく約束を取り付けた。 
食べに行ったお店は美味しく、こんな場所地元にあったんだとびっくりした。
「先生このあとどうします?」
返るのには少し早すぎる時間な気がして口を開いた。このままお別れもちょっと寂しいなと思っていた。 
「お前さえ良ければ、俺の家に来るか?」
一瞬思考が停止した。
先生が一人暮らしなのはラインで知っていたからだ。
つまり、あれだ。一人暮らしの男性の家にいくなんて…そういうことだ。何もないかもしれないけど何かあってもおかしくはないのだ。
私ももうお子ちゃまではない。それくらいの意味はわかる。
でもこんな誘い、断りたくない。
安い女にはなりたくないが、なにせ長年好きだった人だ。すこしくらいは。そう思った。
「いいですよ。わーたのしみ!」
なんにも知らない子どもようなテンションで返事をした。

先生の家について色々話してお酒も入ったところでやっぱりそういう雰囲気になって…そのあとは恥ずかしいので想像にお任せしよう。

そんなこんなで冒頭に戻るのだ。

「先生、あのね。私のことを本気にさせたんだから覚悟してくださいね。」

恋物語は始まったばかり。
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