そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
2人きりの部屋。

東條さんはリビングに入ると、腕時計を外しカウンターに置く。

そして備え付けのキッチンの冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出しごくごくと飲んだ。

そんなしぐさも見慣れていたはずなのに、また初めてみたいにその所作の一つ一つに心臓が跳ねる。

こんなにも大変な状況の中で、東條さんの様子は至って普通で、彼のオーラは以前よりも一層増して輝いているように見えた。

私なんかいなくても彼は輝いていられるんだ。

それは私が彼にとっての特別じゃないから?

この間、柳本さんがまるで東條さんが私のこと好きみたいなことをほのめかしていたけれど、きっと柳本さんの勘違いだわ。

短く息を吐いて首をすくめた。

「何か飲む?温かいものなら紅茶かコーヒーしかないけど」

「別にいいです」

「じゃ、俺と同じもの淹れておく」

マイペースで強引なところはちっとも変わらない。

そんな彼に少しだけホッとした。

リビングのソファーに座ると、キッチンに立つ東條さんの姿が見える。

時々邪魔くさそうに前髪を上げながら、コーヒーを淹れている姿がとても懐かしくて、このまま時が止まってしまえばいいのにと思った。

ふいに彼が視線を上げたので目が合う。
じっと見つめていたことがばれることが恥ずかしくて思わずうつむいた。

キッチンで彼の微かな笑い声が聞こえる。

「なに少女みたいに恥ずかしそうな顔で目を逸らす?もうそんな間柄でもないだろう。お互い全て知り尽くしてるくせに」

きっと意地悪で言ってるんだろうとわかっているけれど、免疫のない私の顔はカーッと熱くなった。

「冷たくされて、もう全部忘れました」

目を逸らしたまま口を尖らせ必死に言い返す。
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