そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
「そうだったか・・・・・・」

ようやくGMが口を開いたけれど、どうも私のことははっきり覚えていない様子に妙にがっかりしている自分がいた。

そりゃあれほど毎日忙しく飛び回ってる人だからいちいち出会った全ての人のことなんか覚えてるわけないもんね。

しかも、この間も真知さんのおまけみたいにひっついてただけだったし。

「我が社のご利用ありがとうございます。柳本は優秀なスタッフなので何でも相談下さい」

突然、GMは丁寧な口調で姿勢を正し私にそんな言葉をかけてきたので、私も思わず背筋を伸ばす。

そして、扉を閉める直前、GMが微かに口もとを緩めて言った言葉を私は聞き逃さなかった。

「ではまた、お嬢ちゃん」

パタン。

扉は静かに閉まり、さっきまでの緊張オーラが一気に消失していく。

それとともに、ふつふつとお腹の奥の方で沸いてくるものを感じていた。

今、私のこと『お嬢ちゃん』って言わなかった?

童顔で背も低いけれど、一応26歳だし、つい最近会社でも主任に昇格したれっきとしたキャリアウーマンに向かって!

扉を微動だにせずにらみつけている私に気付いた柳本さんが「大変失礼しました」と横で頭を下げた。

「いえ、すみません、大丈夫です」

柳本さんの言葉に我に返って、慌てて頭を下げる。

「一見ぶっきらぼうな東條ですが、普段はとても穏やかで優しくて情の深い人間なんですが。誰よりもスタッフを第一に考えていて僕も尊敬しています。でも、岩倉様のように素敵な女性に言う冗談にしては少し口が過ぎましたね。戻ってから注意しておきます」

普段は優しい?嘘でしょう?

あんな威圧感醸し出して、私に「お嬢ちゃん」なんて馬鹿にしたこと言って!

柳本さんは口もとを緩め、続けた。

「実は僕も驚きました。東條とはもう10年来の長い付き合いになりますが、ほとんど初対面の相手に対して気さくな言葉をかけ、しかもあんな風に笑う彼は初めて見たかもしれません」

柳本さんは、一呼吸置き言った。

「おそらく、嫌な相手にはしないと思います。むしろ気に入ってる相手というか・・・・・・すみません、東條のフォローで言ってるわけではなく僕の本心をお伝えしました。でもお気に障ったことは大変申し訳ありません。後で1階カフェのお食事券をお渡ししますので、このたびのことはどうかお許し下さい」

全然悪くない柳本さんが申し訳なさそうに頭を下げているのが、逆に自分の失礼な態度のせいだったと反省する。

私は首を横に降りながら笑顔を作って言った。
「いえ、もう大丈夫です。こちらこそお気を遣わせてしまってすみません」

そう言った私を見て柳本さんはようやく安心したような顔を見せた。


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