そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
兄は照れ隠しなのか話題をすぐに変えた。

「それはそうと、5年前、友梨を助けてくれた相手のことだけど」

ドクン。

その話を出されたら、自ずと体が緊張する。

あの時の恐怖とあの時助けてくれた彼に対する気持ちが私の心を震わせていた。

「こないだ母さんから聞いただんだけど、先月店に来た常連客で、友梨を助け出した後『必ず助けて下さい』と言い残して立ち去った彼と現場で遭遇したっていう人が現れてね」

「え」

思わず手が止まり、兄の目を必死に捉える。

「その人も5年前の記憶だから定かじゃないとは言うんだけど、とても長身で当時20代半ばから後半くらいの男性だったって。右腕のシャツがひどく焼けていたから、多分右腕にやけどを負ってるんじゃないかって言ってたみたいだ」

ドクンドクンと鼓動が速まっていく。

彼は私を助けたけれど、ひどいやけどを負ったのかもしれないんだ。

それなのに、私だけを助けてやけどの痛みに耐えながら一人で去ってしまった。

その姿が目に浮かぶようで胸が締め付けられる。

「友梨、大丈夫か?」

「ああ、うん」

ドキドキする胸を押さえながら、兄の方に顔を向けた。

「それで続きがあって、どうもその彼らしい人とこの東京ですれ違ったって言うんだ。これも確証はできないらしいけど、背格好がとても似ている人だったって」

「じゃあ、その人は東京にいるかもしれないってこと?」

「うん。だけど、東京っていっても広いからな。ただ、少しだけその男性に近づいたような気がして一刻も早く友梨に伝えたくてさ」

あの彼が東京にいるかもしれない。

本当にすれ違っていたかもしれないんだ。

はぁ~。

大きく息を吸い込んで吐いた。

なのにまだドキドキしている。

兄はそんな私を心配するような目でじっと見ていた。


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