そばにいさせて~クールなあなたとのセカンドストーリー⭐番外編追加⭐
「別に余計なことじゃないと思うけど」

柳本さんは少しイライラしているGMをわざと挑発するような調子で返した。

GMは「ふん」と鼻で笑うとそれ以上何も言わず前を向く。

きっと二人はそれだけ信頼し合ってるからだと思うけど、私にはまだこの状況になれなくて肩に力が入ったまま。明日は肩こりがひどくなってそう。

「そろそろ着くな」

柳本さんが外に目をやり、つぶやくように言った。

車は都心に突き刺さるようにそびえ立つホテルの中に入っていく。

このホテル・・・・・・確か2年前に都心の一等地に建った外資系の高級ホテルだったような。

確か、一泊うん十万円する部屋がいっぱいあって、とてもじゃないけれどセレブな人間しか使えないって香織が言ってたっけ。

駐車場を降りホテルの中に入っていく。ホテルのロビーもフロントも眩いくらいにキラキラしていて、思わず首をすくめた。

「このホテルの最上階にある老舗料亭弁天が入っているんですが、今日はそちらに予約を入れています。大智の行きつけの店なのできっと十分なサービスがしてもらえると思いますよ」

エレベータを待っている間、柳本さんはそう言って私ににっこり微笑む。

老舗料亭弁天って!ひゃー、誰もが一度は言ってみたいと願う高級店じゃない?

さすが、東條物産の御曹司行きつけのお店だわ。

20代でそんなすごいお店の料理が食べられるなんて。香織が聞いたら卒倒するかもしれない。

柳本さんの顔を見上げると、思わず両手を口に当てて「すごい」と言ってしまった。

そんな私を見て柳本さんはくすっと横目で笑う。

「岩倉さんは正直でいいですね。羨ましいくらいに」

柳本さんは到着したエレベーターの扉を開き私を先に入るよう促す。

私に続いて相変わらず無表情なGM、そして柳本さんが乗り込んだ。

背の高いGMが私の横に並んで立つ。

ほのかに甘い香り。
GMのオーディコロンだろうか。嫌いな香りじゃない。

並ぶとあらためてその背の高さに圧倒される。

黒に限りなく近いシンプルなグレーのスーツを着こなすGMの姿は、やはりどこからどう見ても洗練されていて認めたくないけれど素敵だ。
きっと私なんかより、あのGM秘書のような華やかで美しい女性が横に並ぶと絵になるんだろうなと感じていた。

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