最愛～一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました～

兄が梨子さんに私を紹介すると、彼女は真面目な顔で挨拶する。
「佐藤梨子です。若先生に頼まれて買って来たんですけど、もしサイズとか合わなかったらごめんなさい。私とサイズ同じくらいだって伺ってたもので」
不安そうに私を見る彼女にニコッと微笑んだ。
「いえ。ありがとうございます。助かります」
優しそうな人だ。
兄に素敵な人がいて嬉しく思う。
「じゃあ、香澄、医局に行ってるから何かあればナースコールで知らせて」
「はい」
返事をすると、エレベーターの前でふたりと別れた。
慧に電話をかけようと思ったが、父のことが気になってやめた。
水沢さんがいたら怒られそうだけど、逃げているんじゃない。
もし目覚めた時に誰もいなかったら、父は混乱するかもしれないから。
私が側にいてあげないと……。
今だって、意識が戻って誰かを呼ぼうとしているかもしれない。
集中治療室に戻ると、ベッドの横に置いてある椅子に座り、父の手を握った。
「お父さん、戻って来て」