最愛~一夜の過ちから御曹司の溺愛が始まりました~
私を心配してくれる人もいるんだ。
『そうだったんだ。お兄さん、助けてくれてありがとう』
心からお礼を言うと、彼は『忘れないで。僕の命令は絶対だからね』と念押しして、スッと私の前から消えた。
「お兄さん!」
彼を呼び止めようとして叫んで、パッと目が覚めた。
あれ?
ベッドに慧と寝ている。
「今のは……夢?」
お兄さんと会った時の……私の記憶。
私の大事な思い出だ。
「良くない夢でも見た?『お兄さん!』って叫んでたけど」
慧がギュッと私をその逞しい腕に抱き締める。
この優しい抱擁で、あのお兄さんとのことを思い出して夢に見たのかもしれない。
「ううん、懐かしい夢を見たの。私が胸を切られて襲われた時に助けてくれたお兄さんが出てきて」
私の説明に、彼は真剣な面持ちで訊ねた。
「『懐かしい夢』って、それは『怖い夢』じゃないのか?胸を切られたんだろう?」
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