イメージ通りじゃない彼と、ときめくリアル恋愛
私はずっと自分の足先ばかりを見てた。
いつもの通勤靴にグレーのチェックパンツを見つめ、土曜日とは違い、装いも気分も暗いな…と考えた。

なかなか気分が上がらない私の側を車が数台駆け抜けてく。
それに視線を流すこともなく歩き続けてたら、ププッ！とクラクションが鳴り響いたからビックリした。



「望月さん！」


車道から声をかけられて目を向ける。
そこには白い軽自動車に乗ったドクターが居て、目を丸くした顔つきで、「どうしたんだ！？」と訊ねてくるからハッとした。



「あ……」


直ぐに駆け寄って泣き言を言いそうになり躊躇う。

彼に会って何を言おうと考えてもなかったくせに、顔を見ると不思議と泣き言を言いそうになって慌てた。


「何か用事だったのか？」


往診の帰りなのか、白衣を着たまま車から降りてくるドクター。
私はその姿を見つめて胸をキュンと竦ませ、「別に」と努めて明るい声を返した。


「学校の帰りで歩いてたら近くに来てたから、何気なく寄ってみただけ」


特に用事も何もないよ、と言うと顔を見下ろされ、じっ…と訝しそうに見つめてくるから目線を逸らせた。


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