恋は思案の外




腕時計に視線を伸ばすとあと少しで開場時間で。

安堵の息と言うか疲れ切った溜め息を洩らしながらも前へと向き直っていれば、当然のごとく同じ方向を向いた小学生組に思わず目を丸くした。



「おいコラ。横入りなんて卑怯な真似すんじゃねえよ」

「なに言ってんだよカイリ。俺ら最初からココ居たけど?なあ、ユウヤ」

「おう」

「えっ!!」





衝撃の事実に飛び出した叫び声。いきなり驚きに声を張り上げたわたしにビビったのか、三人は一様にこちらへと視線の先を伸ばしてきていた。

そんな光景を前にしどろもどろになるわたし。いや、でも、だって。最初っから居たって!

この映画館は小さいし、席だって自由席で。逆に言うとだから開場前にこんなに人が並んでいる訳で。

と、言うことは?




「ちょーどいいじゃん。じゃあ4人で一緒に観ようぜー」






タクミだかユウヤだかがそう声を上げたのを皮切りに、開場時間のアナウンスが場内に響き渡る。

待てよ!ってことはわたし三人もお守しなきゃいけないの!?

しかしながら考えてみると、この中で一番厄介なのはヒト科かもしれない……。

じゃあ逆に少年二人が増えてくれて良かったのか?





「楽しみだなー、おねーさん」





逃げたい気持ちを懸命に堪えつつ、薄暗い場内で歩を進め始める。

今日が終わったらヒト科から絶対に距離置いてやるし!店長、マジ恨むし!






    ヒト科は物体Xに降格です

  ( 胸中突っ込みの嵐だよ、もはや )

         *saki





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