恋しくば

自分の隣に腕をついて上体を起こす。辻本がそれを見ているのを感じた。
伸びていた膝を抱く。

「もう行って良いよ。運んでくれてありがとね。あとは百鳥に来てもらうから」
「こんな状態の葛野を放っていけない」
「……気まずいんだって。辻本は嫌にならないの?」

今までの経験上、辻本には気まずいという感情が無いように思える。

「昨日まで好きだったのに、急に嫌いにはなれない」
「……辻本ってばかなの?」
「少なくとも葛野よりは」
「……ばーかばーか」

何故か笑っているので、子供のように抗議してみる。
シーツから保健室の独特な匂いがした。

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