クリスタルオブ・スノウ
「結構擦りむいてんな。足首も腫れてるし……」

蓋を開けた消毒の匂いが鼻をつく。そして、驚くべき光景と言うべきか、藤堂君が私の足を触ってる。
一生懸命怪我の具合を見てくれていて、俯き気味でつむじが見えて――藤堂君は、丸椅子に投げ出している貧相で擦りむけてかわいそうな右足からそっと手を離した。
保健室には私たち二人しかいない。

「保健の先生帰っちゃったみたいだし、サッカー部の顧問呼んで来てやろうか?」
「え……」

サッカー部の顧問、堀先生。通称ゴリ先生……。
私の顔が感情を物語っていたのか、藤堂君は目を細めて笑いながらガーゼとテープを出した。

「えっ、と。自分でやる?」
「はい、自分でします」

同級生に敬語。
いやいやでもでも、怪我の手当てなんてされたら恥ずかしくて何かが爆発する。
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