スーパーガール
その日の午後、棚橋さんは病院で手当てを受けたあと、職場に戻ってきた。

腕をギプスで固定された姿が痛々しい。やはり左手首を骨折しており、癒合に5週間ほどかかるそうだ。


「大げさに見えますが、ずれがほとんどない骨折だそうです。じきに完治しますよ」


棚橋さんはデスクに着くと、心配して取り囲む皆を、安心させるように言った。


「さあ、解散解散。僕のことは気にせず、皆さん仕事に集中してください」


私は何も言えず、自分の仕事に戻った。ファイル整理の続きをしていると、背後から社員の話し声が聞こえる。


「あれはリハビリが必要ですよね」

「利き腕じゃなくて幸いだけど、生活に支障が出るよな」

「仕事は俺らが頑張ればいいけど、家事とかどうするんだろ」

「そういえば、課長は独身の一人暮らしだもんな」


ファイルを手にしたまま、私は考え込んだ。

掃除、洗濯、食事の仕度――棚橋さんは当分、片手で家事をしなければならない。その光景を思い浮かべ、胸がきりきりと痛む。


「よし……決めた」


彼が怪我をしたのは私のせいだ。思いきって、申し出てみよう。

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