スーパーガール
「私がやります。そのために来たんですから」

「いやでも、最初くらいは……」

「いいえ、お任せください」


ぼうっとしてる場合じゃない。私は気を引きしめ、家事手伝いとして早速仕事にかかる。


「台所は好きに使ってください。といっても、何もありませんが」


棚橋さんは、ちょっと恥ずかしそうに冷蔵庫を開ける。

その中には、ドレッシングとイチゴジャムと、お茶のペットボトル。それから、賞味期限ぎりぎりの卵が二個、置いてあるのみだった。


「朝以外、自炊しません。昼も夜もコンビニ弁当か、外食ですし」

「そうなんですね。ということは、お米は……」

「ありません。朝はパン食です」


朝食用に買った食材は、パンとハムとレタスだ。果物も買っておけば良かったと思いつつ、あらためて台所を見回す。

リビングよりもさらにすっきりとして、きれいなものだ。


「ちゃんと栄養を摂らないと、怪我の治りが遅くなります。これからは、私が食事を作りますね」

「えっ? しかし大変ですよ、三食も」

「平気です。ご飯を作るのは大好きなので」


食い意地が張っているから――と、そこまで言いそうになり、笑ってごまかした。

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