強気なサッカー選手の幼馴染みが、溺愛旦那様になりました。(番外編)


 千春と秋文は、熱くなりすぎた体を冷やしながら、体を横にして気持ちを落ち着かせた。
 畳の上に体を預けるなんて、はしたいかもしれない。
 けれど、千春は心も体も冷静になっていくのがわかった。
 近くで彼の呼吸が聞こえるだけで、千春は安心した。


 「…………秋文。私、秋文の事、頑張ってサポートするから。」


 頭もすっきりして、気だるさもなくなってきた。
 千春は畳から起き上がり、同じく横でのぼせてしまった体を休めている秋文に近づいて、千春はそう強く宣言した。

 すると、秋文もすぐに起き上がり、真剣な表情で千春を見つめていた。
 そこには安堵した様子があった。


 「千春………。」
 「最後の約1年、秋文がサッカーに集中できるように、応援するね。私も、出来る限りの秋文のサッカーしている姿、目に焼き付けておきたいし。応援にも行きたい。」
 「気持ちは嬉しいが、おまえには仕事もあるだろ?それに家事もほとんどおまえにやってもらってるし……。」
 「そんなことないよ。秋文はいろいろやってくれてるよ。だけど、これからは私がやるから!サッカーだけに集中して欲しいの。……仕事も大きい依頼が終わったら、なるべく自宅で出来るようなもの貰うつもりだったの。だから、気にしないで。」
 「無理はするなよ。おまえには負担かけたくないんだ。」


 秋文は千春を座ったまま後ろから抱きしめた。千春は彼に寄りかかるように座りながら、「負担なんかじゃないよ。」と返事をした。


 彼は完璧で、千春が手伝わなくてもやってしまう。料理は全くしないけれど、他の家事は気づいたらやってくれているし、千春が疲れていたら食事に誘ってくれて、さりげなくフォローしてくれているのだ。

 だから、今度は自分が彼の役に立ちたい。
 サッカー選手の最後を思いっきりプレイして、楽しんで欲しい。そして、秋文が納得出来る成績を残して欲しい。
 そんな風に思った。



 「ありがとう、千春。おまえは、いい嫁さんだな。」
 「っっ………、そんなこと言われたら、沢山頑張れちゃうよ。」


 やる気を出して両手を挙げる千春を、秋文は嬉しそうに見つめていた。「ほどほどにな。」という言葉は、千春には届いていなかった。




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