流星の彼女に愛の花束を
がくっ
体が大きく揺れる。必死で白衣の人にしがみつく。
「ちょっと、落とさないでよ!」
自分の口から出た高い声に、驚く。
あれ、そういえば私この人の服、掴んでる。
夢中で頭を触ると、サラサラとした髪の感触があたる。そのまま手を下に持っていくと、自分はあごくらいまでのショートヘアーなんだと分かった。
ところどころクルクルしていて、フワフワしている。
「わあ、私人間になってる。」
呟いた途端、はっきりと実感してそれから急に寒くなった。
そっか、人間って元々の体温が低い上に、毛が生えてないから寒いんだ。
ブルブル震えていると、白衣の人が言った。
「僕のマフラーと手袋をとって使って良いよ。」
遠慮なく使わせてもらう。
まあ確かに、よく考えてみたら、こんな真冬にTシャツ一枚じゃ寒いはずだよね。
「えっと、」
白衣の人が困ってるから、私はとりあえず自己紹介をした。
「私星屑。この名前は涼がつけてくれたんだけど、人間にしたらちょっと変かもね。だから新しい名前が欲しいの。あと新しい家族が欲しいの。私捨てられちゃったの。」
私捨てられちゃったの、なんて可哀想なことが自分に起こってるなんて認めたくなかったけど、でも、しょうがない。
人間になっちゃったしね。
白衣の人は混乱してるようだったけど、
「えっと、僕は咲月朔。地元の中学校で理科を教えているよ。」
と言って、私の緊張を解くようにフワッと笑った。
そっか、朔、て言うんだ。
朔は、こんな変な事が起こって驚いたり、怖かったりするはずなのに、笑える人間なんだね。涼だったら悲鳴あげて逃げるよ、多分。
あ、地元ってことは、涼と同じ中学校かもね。
「下ろすよ。」
朔が私を降ろそうとする。
「え、待って。」
私は朔にしがみついて言った。
「靴履いてないの。足はもう傷だらけなの。降ろさないでほしい。」
一気に言った私の勢いに朔はちょっと驚いたようだったけど、すぐに私を持ち直した。
「じゃ、行くよ。」
「うん。」
ユラユラ揺られて、温かいマフラーに包まれて、私はまた眠ってしまった。

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