不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
来訪者は祭ではなかった。玄関に表れたのはふたりの男性で、フードデリバリーサービスのキャップを被っている。

届けられたのは有名なスペインバルのアラカルトとお肉料理。さらにこれまた有名なパティシエのお店からケーキが届いた。

「陣内祭様からのお届けです。御言付けをお預かりしております」

メッセージカードを差し出される。見ればこんな内容だ。

『翠、ハッピーバースデー
俺は急な仕事で行けなくなってしまいました。本当にごめん。
プレゼントは明日着で翠の家に届くから受け取ってね。
今夜は豪と仲良く過ごして!
祭』

豪とふたりでカードを覗き込み、脱力しそうになってしまった。
絶対、嘘だ。
いや、実際に仕事なのかもしれない。でも、ここに来られないように図ったのは間違いない。

私と豪をふたりきりにさせようということだろう。ああ、もう、祭になんか相談するんじゃなかった!

しかし、私も豪も祭の思惑がわかっていても口に出せない。だって、いざ口に出したら気まずいことこの上ない。
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