不本意ですが、エリート官僚の許嫁になりました
メシ……豪と食事……。ふたりで食事くらいしたことある。学食とか仕事の外出の出先とか。
でも、こんな風に誘われてご飯っていうのは覚えがない。

「ラーメンならいいよ!」

意識しすぎなのか、大声で牽制みたいな答え方をしてしまった。普通でいいのに、私の馬鹿!

「ラーメンか。珍しく気が合うな。俺もラーメン食いたい」

豪としては食事の内容までは考えていなかったのかもしれない。私の答えに乗ってくる。

「こってり系の豚骨。店に入る前から匂うくらいの濃いやつ」
「ちょうどいい店知ってるぞ。にんにくもすごいけどいいか?」
「いいわよ。明日は土曜だもん」

私はいそいそとパソコンをシャットダウンする。さっきまでのしぼんでいた気持ちにぐんぐん空気が入ってくる感じ。膨らんで胸があったかい。

「チャーシューがっつりのせたいんだけど」
「あそこは角煮みたいなゴロゴロ系だったな」
「それ、楽しみ。お腹空いたなあ!」
「俺も腹減ったから、がっつり食べよう」

オフィスを締め、並んで職場を後にする私たちは、たぶんどっちも心が軽くなっていたと思う。

電車で食べに行ったラーメンは期待通りの味だった。大盛ラーメンをふたりでずるずるすすって特に何をするでもなく解散した。
帰宅するとあまりの豚骨とにんにくの匂いに母が顔をしかめたっけ。豪と一緒に食べてきたと伝えたら妙に喜んでいた。
あんなに悩んでいたのに……結果は悪くない一日だったな。
ぽっこり膨らんだ胃を撫でて、私はお風呂で考えた。ぼんやりと水滴のついた天井をながめて。

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