強制食料制度
体育館
「唯香、大丈夫か?」


良から逃れて人気のない公園に入ったとき、あたしはようやく立ちどまった。


荒い呼吸を繰り返し肩が上下する。


「大丈夫……」


水を飲んでベンチに座るとようやく落ち着きを取り戻し、大きく深呼吸をした。


「間に合ってよかった」


俊和はそう言い、あたしの隣に座ってほほ笑んだ。


痩せてしまったけれど、それは紛れもなくあたしが好きな俊和の笑顔だった。


その笑顔を見た瞬間、胸の奥がシンッと熱くなって来た。


もう泣かないと決めたはずなのに、涙があふれ出して来る。


たった数日の間に何度命を狙われたかわからない。


何度危険な目に遭ったかもわからない。
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