彼女のセカンドライフ

そんなこととは露知らず、武尊は、目撃者捜しに明け暮れていた。また発生した胃の痛みに堪えながら。

目撃情報を始めてしばらくのこと、武尊のつぶやきに、有力な情報が寄せられた。

――事故の重要な証拠を持っています!

武尊は、逸る気持ちを抑えて返信した。

返信の相手は、男性で、事故当時、事故現場の近くの民家に帰省中だったとか。

ダイレクトメッセージでのやり取りに切り替え、その当時のことを詳しく書いて来た。

しかも、画像は粗いものの、衝突したあと、走り去る車を、慌ててスマホで撮影していると言う。

なぜその時すぐに通報できなかったのか?

それは、撮影していた時、出産に備え、帰省していた妻が突然破水したから。

そちらに気を取られて、事故どころでは無くなっていた。

忙しさの中、事故がニュースになっていたことさえ気づかなかったらしい。

最近そのことを思い出して、調べていたら、武尊のつぶやきに辿り着き、反応したと言う。

――遅くなって本当に申し訳ない!
 
そう締め括られていた。

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