先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
花笑Side
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微睡みの中

暖かいものに包まれ気持ち良くて無意識にすり寄っていた。
意識が浮上して、うっすら目を開けると目の前に素肌の胸があって驚いた。
起き上がろうとしたらがっちり腰に腕が巻かれ身動きができない。

「こ、こう…、あ、航さん」

ついついこうくんと呼びそうになって、不機嫌な顔の航さんを思い出し言い換える。
航さんはまだ眠っているようで、私に腕枕をし、こちらに向いて目を瞑っている。
カーテンの隙間から青空が見え、外は明るいけどまだ早朝。
ひやっとする空気に半分起き上がっていた身体をまた胸の中に戻し、暖かさを求めた。

私、航さんの彼女になったんだ…。

逞しい胸の中に収まり漸く実感し幸せを感じながら、航さんの顔を見つめる。
長い睫毛、筋の通った鼻、薄い唇…。
眠っているのに眉間に皺が寄っていって、最近残業続きで帰りが遅かった事を思い出す。
きっと疲れているのだろう…そっと手を伸ばし眉間に触れた。

「……ん…」

僅かに声が漏れ睫毛が揺れて、起きるかな?と思って手を離したけど、静かな寝息が聞こえてきた。
まだ起きないことに気を良くして今度は髪に触れる。
短くてフサフサの髪は意外と猫っ毛で、柔らかくて気持ちいい。
夢中になって手を差し入れ鋤いているとぎゅうっと苦しくなるくらい抱き締められた。

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