先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

どれくらい時間が経ったのだろう。
航さんの腕が緩み離れようとするから、必死でしがみついた。

「おい花笑、ちょっと離れろ」

離そうとする航さんにイヤイヤと思いっきり首を振る。

「はぁ~、花笑、取り敢えず一旦離れろ。早くしないと今日が終わってしまう」

ハッとして顔を上げた。
そうだ!今日は航さんの誕生日だ!明日帰って来るとばかり思っていたからびっくりして忘れていた。

「あっ、航さん、お誕生日おめでとう!今日ケーキ作ったの!ケーキの写真送ってあげようと思ったんだけどその前に寝ちゃったみたい」

へへっと苦笑いして立ち上がる。

「せっかくだから食べよう?私、夜ご飯も食べてないからお腹空いちゃった。」

「ああ、そうだな」

それを聞いて、いそいそと準備に取りかかる。
ケーキと買っておいたシャンパンを出し、ソファー前のテーブルに並べた。
ケーキに蝋燭を立て火を付ける。
航さんがシャンパンを開けるとパンッと弾ける音が響く。
グラスに注ぎ、乾杯した。

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