先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

港近くの商店街の中。
地元でおいしいと評判のお寿司屋さん「海里(うみさと)」が航さんのご実家。
航さんは長男で弟さんがいるそうだけど、長男だからお店を継がないの?と聞いたら、

「子供の頃から俺より弟の方が料理の才能があったからな、弟が店を継ぐことになっている。だから俺は大学進学を期に家を出た。弟も継ぐ気で料理の専門学校に入って、今は親父の元で修行してる。家族全員納得してるんだ。」

航さんも美味しい料理作れるんだけど、プロの域までは達しなという。弟さんは才能だけじゃなく努力して家を継ごうと頑張っていてご家族も応援してるそう。そんなご家族に会えるのが楽しみだった。

昼間はみんな店に出ているからと、お店の入り口から入る。
引き戸を開けると「いらっしゃいませ~」と元気な声が。

先に入った航さんを見て、「あっ航!…」と声がしたと思ったら、航さんを押しのけ出てきた女の人。

「まあ!あなたが花笑さん!?あら~っきれいなお嬢さん!航のお嫁さんだなんて嘘みたい!勿体ないわ~!!」

いきなり私の手を取り捲し立てる女の人にどうしていいかわからなくて固まっていると、押しのけられた航さんが呆れ顔で振り向いた。

「お袋、花笑が困ってる。とりあえず中に入れてくれ」

「えっ、お義母さん!?」

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