先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

それからしばらく波打ち際まで行ってみたり、みんなとワイワイ話したり写真を撮ったり過ごしていた。
相変わらず山片課長は少し離れてるところのベンチに座って海を見てるから、なんだか気になって怖いけど近づいて恐る恐る聞いてみた。

「課長、なんでずっと一人で海見てるんですか?」

「ん?ああ、海見てるのが好きなだけだ。気にするな」

おもむろにこちらを見て答えてくれた。
あれ?今日はあんまり怖く感じないぞ?
さすがに今日は仕事じゃないから鬼オーラが出てないのか雰囲気が柔らかい。

「山片さん、知佳ちゃん」

呼ばれて振り向くと日野さんと花笑さんがこちらに来た

「山片さんせっかくだからみんなで写真とりましょう、知佳ちゃん行こう」

日野さんがいつもより話しかけてくれるから嬉しい。知佳ちゃんと呼ばれる度にドキドキする。

「あっはい!せっかくみんなで来たから写真いっぱい撮りましょ!」

日野さんの方に駆け寄って課長の方を向いたら花笑さんが課長を誘っていた。

「山片課長も入りましょ」

「あ、いや俺は……」

「いいじゃないですか、一緒に写真撮りたいです。」

課長の腕をとって引っ張っている。普段課長に近づかない花笑さんが積極的に課長を誘っていてちょっとびっくり。強引に引っ張られてる課長も苦笑いしてるものの嫌そうではなくされるがまま。レアな光景を見て呆然としてしまった。これも職場外で海の開放感のなせる技なのだろうか?

「さ、知佳ちゃんも行こう」

私も日野さんに促されてみんなのもとへ行った。

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