先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~

本当は・・・・・

最近やたらと絡んでくる西川を鬱陶しく思いながらも無視いていた。
ところがこの間、たまたま二人きりのなった時に食事に誘われ、断ったにもかかわらず、

「私たち、お似合いのカップルって言われてるんですよ。噂通りに付き合ってみません?後悔させませんよ?」

上目使いで擦り寄ってきて腕を取るからパシッとそれを払った。

「お前は噂で付き合う相手を決めるのか?」

「えっ?」

「自分の意思はないのか、随分と安い女だな」

「…っ」

ちょっときつい言い方になってしまったとは思ったが、忙しい上にどうしても映画の公開日に花笑を連れて行きたいがため、躍起になって仕事をしていた俺に纏わりつくこいつが邪魔で仕方がなかった。
その鬱憤が出てしまって悪いと思いつつ、赤い顔して言葉を失っている西川を横目にその場を後にする。
さすがに、プライドだけは高い女だ。
それ以来纏わりつくことも無くなって、仕事に打ち込むことができた。

だからこうやって、花笑を映画に連れてったわけだが・・・・・


まだ、疑いの目で見る花笑にどう誤解を解こうかと思案していると、

「でもさっき、一緒に居られないって・・・」

また泣きそうな顔をして小さな声で訴えてくる

一緒に居られないなんて言った覚えないんだがな…
一緒に飯を食うことも出来なくなる、とは言ったか…。
小さな独り言を聞いて不安だった想いが溢れてきたってことか。
改めて曖昧だった関係が不安にさせていたんだと思い知らされる。

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