先輩の恋人 ~花曇りのち晴れ渡る花笑み~
「…っ…」
何も言えず、下を向く松崎に構わず畳み掛ける
「もう何年も前のことだ、誰も思い出しやしない。好奇な目ももう向けられることもないし、嫌がらせした本人達はもういないんだぞ?」
「……わかっている、そんな事。でも、やっぱり操さんを目の前にすると…怖い。直接何かされた訳じゃないのにあの時の事が思い出されて……私達のこと知ったらどう思うかと……」
「もうとっくに山片さんとは切れてんだろ?今さら何かされるとは思わないが?」
「わかってる!わかっているけど気持ちがついていかない……」
苦悶の表情の松崎。
二人は固い絆で結ばれていると、イヤというほど側で見てきたのに、過去の事が原因で堂々と交際することができない。
見ているこっちがやきもきする。
沈黙が訪れたとき、視線に気付き入り口を見る。
ビクッと震える肩、小さな体をゆっくりと現したのは夏野さんだった。
にこにこと笑いながらも焦ってる感じがある。
「…何、話てるんですか?」
「いや、何でもない。ただの息抜きだよ」
さっきの聞かれたか?と思ったが、話の内容までは聞いてない様子。
伺うような目で見てくるのは気になるが、この子に限っては害をなすようなことはないだろう。
松崎も静かに笑っている。
もう一人
話を聞いていた人物が居ることには気付かなかった。