セナカアワセ
「事故のことも悪くないって言ったけどさ、半分はそっちの責任だよね?どうせこのタイミングで呼び出したのも、嫌な過去を無くしたくて、でも出来ないから私に許してもらおうってことでしょ?見え見えだよ。好きな子でもできたから?あー、いたよね。初詣のとき。あの子に事故のことバレちゃったんだー。」




淡々と話し続ける由果を、俺はただ見つめることしか出来ない。



「ね、そうでしょ?辛い辛い過去から抜け出したくて、来たんでしょ?そんなに自分のこと責めるのやめたいなら、許すよ。遙人のこと。あの事故は遙人のせいじゃない。子供すぎた私のせい。」




ほら、許したよ?そう言って由果は笑った。



「でも、一つだけ条件。許してあげる代わりに、あの子と付き合わないで。」




「はっ!?」




やっとこの時声が出た。




「なんでだよ。それは関係ないだろ?」




「やっと言い返してきたね。だって、悪いと思ってるんでしょ?自分のせいだって自分のことたくさん傷つけて、苦しかったじゃん。私もいつまでもあのこと引きずられるのも嫌だし。だから、その苦しみとってあげるから、あのこと付き合わないでって言ってるの。」



言っていることは、正論、そう思った。




俺は那美香に告白したくて、由果を呼び出したし、終わりにしたくて、許して欲しくて、ここにいる。




由果の言っていることは、全部が全部間違っていない。




でもここに、那美香は関係ない。




「よっぽど好きなんだねー。破ろうなんて思わないでね?破ったら、今度はその子のこと傷つけてみようかな。少しだけ。」




それだけ言って由果は帰って行った。




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