【完】さつきあめ
それは、本気を出すということ。
大好きな綾乃と本当は戦いたくはなかった。
同じ人を好きになんか、なりたくはなかった。
その宣言通り、綾乃は次の日から変わった。
持っている客数はもともと少なくはない。
けれど数では勝負せずに、どちらかと言えばわざと自分のお客さんを被らせないように呼んでいたように思える。けれど呼んでいたお客さんひとりひとりの重さがこの店の誰よりも重たかった。
決して指名変えされることのない綾乃の魅力。それにくわえ、本気を出した綾乃に対してのお客さんたちは嬉しそうに、使うお金に惜しみはなかった。
レイのように1人の太客にすべてを委ねるタイプではなかった。
ひとりひとりが太客だったのだ。
でもあそこまで言ってしまった手前、わたしは絶対にナンバー1にならなければいけなかった。レイを真似したやり方ではなく、わたしはわたしらしいやり方で。
「なんかさくらちゃんらしくなったよね~」
安井が卓で言う。
「らしい?」
「なんだっけ~?レイちゃん?いた時のさくらちゃんちょっとピリピリしてたってか怖かった、ちょっと」
「あ、ごめんなさい。本当に、あの時はどうかしてたよ」
「俺さくらちゃんのキャバ嬢ぽくないところ好きだったからさ」
「ありがとうございます。安井さん、のも、のも!」
指名客が来ている時でも意識してる自分がいる。
綾乃が自分の指名の席で上品に笑う。 何もしていないはずなのに、高級なワインがゆっくりと空いていく。
それは決して派手ではなかったけれど、レイとは違うやり方でわたしを追い込んでいく。
大好きな綾乃と本当は戦いたくはなかった。
同じ人を好きになんか、なりたくはなかった。
その宣言通り、綾乃は次の日から変わった。
持っている客数はもともと少なくはない。
けれど数では勝負せずに、どちらかと言えばわざと自分のお客さんを被らせないように呼んでいたように思える。けれど呼んでいたお客さんひとりひとりの重さがこの店の誰よりも重たかった。
決して指名変えされることのない綾乃の魅力。それにくわえ、本気を出した綾乃に対してのお客さんたちは嬉しそうに、使うお金に惜しみはなかった。
レイのように1人の太客にすべてを委ねるタイプではなかった。
ひとりひとりが太客だったのだ。
でもあそこまで言ってしまった手前、わたしは絶対にナンバー1にならなければいけなかった。レイを真似したやり方ではなく、わたしはわたしらしいやり方で。
「なんかさくらちゃんらしくなったよね~」
安井が卓で言う。
「らしい?」
「なんだっけ~?レイちゃん?いた時のさくらちゃんちょっとピリピリしてたってか怖かった、ちょっと」
「あ、ごめんなさい。本当に、あの時はどうかしてたよ」
「俺さくらちゃんのキャバ嬢ぽくないところ好きだったからさ」
「ありがとうございます。安井さん、のも、のも!」
指名客が来ている時でも意識してる自分がいる。
綾乃が自分の指名の席で上品に笑う。 何もしていないはずなのに、高級なワインがゆっくりと空いていく。
それは決して派手ではなかったけれど、レイとは違うやり方でわたしを追い込んでいく。